最低狩り

「あれ?おかしいな、ここが約束の場所のはずなのに……」

どこかわざとらしく、スマホを見ている。

やはり、今日の花奈はどこかおかしい。 

「……あの、やっぱり、俺、クビっすかね?」

我慢できず、一番知りたかったことを思い切って聞いた。

夏の日差しによる暑さと、緊張による汗が喉仏を伝う。

花奈は、涼しげに微笑み、こう答えた。

「クビにはしませんよ」
 
は……?

「ほ、本当ですか!?」

良かった。
 
舞い上がって舞い上がって、世界が輝いて見えた。

1人で喜んで、ふと、花奈を見て鳥肌がたつ。

唇がゆっくりと、異様な曲がり方をしたのだ。

何か、闇を抱えているような。

「彼女、来ないですねぇ」

突然声を出すので、ずっと見ていて不快に思われたのかと、心臓と共に体が跳ねた。

「もう少し、待ってみましょうよ!何か外せない用事でもあったかもしれないですし」

焦り気味に言葉を紡ぐ。

すると花奈は、やけに高い声で話を始めた。

「じゃあ、お話しません?私、伊達さんと話したいことがあるんですよねぇ」

粘つく話し方も、気に障った。

「へ、へぇ、興味深いですね、どうぞ、話してください」

「3つあるんでぇ、1つ目からいきますね」

奇妙すぎる。

心臓が早鐘を打ち、溢れ出す汗は止まりそうもない。

「はい、どうぞ?は、話してくださいな」

「奥さん、おられるんですよね?」

オーラの割には無難な話題で胸を撫でおろした。

「えぇ、まぁ……他界しましたけどね」

本当に、美人だった。

美奈も。

真奈によく似て、勤勉で、才色兼備で、だけど少しキツくて。

「知ってます」

知ってます?

自分の耳がおかしくなったんじゃないかと、疑う。

「美奈さん、ですよね」

どうしてそれを……!?

血の気が引くのをしっかりと感じた。

「中々のお嬢様だったとか。それで、伊達さん、婿養子になって、伊達財閥の名前を使ってかなりのことをしたそうですね」

< 18 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop