37℃のグラビティ
アタシの心の中、新海に対する疑似友情? みたいなものが生まれていた。


新海が一緒に来てくれなかったら、きっとアタシは今、ここに居ないから……


「新海くん」


呼び掛けたアタシに、新海は足も止めず、無表情で振り返る。


「一緒に来てくれて、ありがとう」


新海は一瞬、ちょっと驚いた顔をして、口端を上げると、


「ファミレス見っけ」


改まったアタシに何を言うわけでもなく、会話を逸らした。


ウエイトレスに案内された窓際の席に、向かい合って座る。


さっそく手にしたメニューを開いた新海を見て、ふと思い出す。


バスのチケットを手配してくれたのは新海なのに、その代金を払い忘れていた。


「バスのチケット代、いくらだった?」


バッグから財布を取り出して、新海に訊く。


「いくらだったか、忘れた」


「アタシが二人分、ちゃんと払うから、思い出してよ」


「お前、誕生日いつ?」


「7月7日だけど?」


「なんだ。もう1ヶ月もないじゃん。チケットは誕生日前祝いって事で」


「そんなのダメだよ」


「12月24日」


「え?」


「俺の誕生日。なんなら、体で返してくれてもいいけど?」


必殺「アーヤスマイル」で、新海は会話を終了させた。


どうやっても、お金を受け取りそうにない新海に、どうしたものかと考える。


ここのファミレス代を払ったところで、きっと多分追いつかない。


例え二人分のチケット代を払ったとしても、それは同じ。


お金に変えられないほどの感謝をしてるアタシがそこにいた。
< 59 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop