身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
1.見合いの真似事
 とある休日の午後。それは、まさに青天の霹靂だった。

「私にお見合いしろって……本気で言ってるの?」

 動揺と怒りで声が震えた。

「ほら! (あずさ)から交際の報告されたことなんか一度もないし、そういう素振りだって思い当たらないって母さんも言ってたし」

 私の剣幕に怖気づいた父は、必死に作り笑いを浮かべてそれらしい理由を並べ立てる。
 だけど、私はまったく受け入れなかった。

 いくら私にずっと恋人がいないからって、重大な話を急に決めてくるのは反則だ。

 私が睨み続けていると、父はすぐさま頭を下げた。その拍子にダイニングテーブルが動き、マグカップに入っていたコーヒーが揺れる。

「すまん! でももう結婚するのに早いって歳でもなくなってきてるし、素性の知れた相手なら親としても安心……」
「私がなにも知らないと思ってる? そんなわけないでしょ」

 父の言葉を遮って、私は握った拳をドン、とテーブルの上に打ちつけた。

 父がそろりと顔を上げたのを見て、さらに捲し立てる。

「ただのお見合いならまだしも、私は身代わりでしょ!? どんな気持ちで行けっていうのよ!」
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