8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 フィオナは侍女に頼み、色とりどりの紐を複数用意してもらった。

 この国の農村部に、紐編みという技術がある。基本の編み方はねじり編みと平編みのふたつだけで、紐を結んでいろいろな模様を作ることができる。更にそれを組み合わせることで、網のような幅の広いものも作れるのだ。農村部ではこの編み方で麻袋を作り、収穫した野菜を入れ、乾燥させていた。ローランドたちと逃げた四回目の人生で覚えた技術だ。

(あの当時は麻紐しか手に入れられなかったけれど、今なら綺麗な銀糸入りの紐も、サテンのリボンも使うことができるわ)

 紐の編み方にひとつに、花編みというのがある。大きなものを一つ作ってブローチのようにすることもできるし、小さいお花を続けて編んでひも状につなげることもできる。当時も、麻袋につけて飾ってみた。フィオナはかわいいと思っていたが、農村部の生活に苦しい女性たちは遊び心がなかったので、邪魔だと言われ流行らなかった。
 あのときは悲しかったが、編んでいるのは楽しかった。編み方もちゃんと覚えている。

(趣味を持つことは心を豊かにするわ。できるだけ大量の紐を今のうちに買っておいて、嫁入り道具として持っていこう)

 退屈は人をダメにする。だけど、なにかしら手慰みがあればそれだけで気持ちが安らぐだろう。

(そうよね。どんな状況でだって、楽しみを見つければいいのよ)

 子供の頃は、ローランドやトラヴィスと城を抜け出して探検して野山を駆けまわるのが好きだった。怒られることも多かったが、自分で決めて行動していた日々は、楽しくて懐かしい思い出だ。

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