8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

「フィオナに、俺の子を産んで欲しい」

 抱き上げられ、そのまま寝室へと運ばれた。これから何が起こるのか、フィオナにだって想像がついた。初めては痛いというから、咄嗟に氷塊を出してしまうかもしれない。

「……はい」

 それでも、今はその先に進んでみたかった。何度も繰り返した人生で、初めて得られた愛される喜び。

(おかしいの。今度こそ、愛を求めないって思ったのに)

 最高の人生が、フィオナの元へ降りてきた。
 大切なのは、自分を愛すること。自分を大切にして、周りも楽しめるよう努めること。
 笑わないヒロインを誰が愛するだろう。自分だけが幸せになろうとして、幸せになれるような人は、愛されるはずがない。

(ありがとう、ドルフ)

 フィオナは、人生のやり直しに感謝した。何度もやり直さなければ、甘えんぼのフィオナにはきっと気づけなかった。

(私が皆を愛しているから、愛してもらえるんだ)

 一方通行じゃない関係が、きっと本当の愛を育むのだろう。

「……っ、ん」

 ドロドロに溶けてしまいそうな甘さと、身を引き裂くような痛みを同時に感じながら、フィオナは心に刻みつけるようにそう思った。

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