8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 しかし、ポリーは気にした様子はない。

「売るのは父ですから! 私、もともと王宮の仕事を志願していたわけじゃないんです。ただ、貴族との伝手を得るために送り込まれただけで。だからバレて解雇されても困りません!」

「あら、そうなの。だったら当てが外れたわね。私付きになったのでは、この国の貴族たちとの伝手は作れないと思うわ。人質の側妃ですもの」

「大丈夫です。代わりに儲かりそうなものも見つけられましたし。他の方につくよりも、フィオナ様についた方がおもしろそうです」

 今世のポリーは生き生きしている。もともと商人気質なのだろう。この様子では、王宮侍女など性に合うわけがない。

「まあ、趣味が役に立つのならいいわね」

 フィオナが納得すると、ドルフがとてとてと歩いてきて、腕に顎を乗せてきた。

『作ってもいい。が、俺のと同じのは作るなよ。これは俺だけのものだからな』

 ドルフが紐編みの首輪を見せつけるように顎を上げ、フィオナにだけ聞こえるように言った。

(……気に入ってはくれてるのね)

 言い方はぶっきらぼうではあるが、ドルフなりに大事に思ってくれるのだろう。

 フィオナは子供の頃はお転婆な質だったので、こんな風に小物類を作ることなどなかった。まして誰かにプレゼントすることなど皆無だったのだ。
 だから、こうしてあげたものを大切にしてもらえるのが、ただ無性にうれしくなった。
 ループ人生の間、愛がほしくて仕方がなかった。君が一番だと言ってくれる人が欲しくて、人から見える自分にばかり固執していた。だけど。自分を見つめ直した今の方が、愛されている実感がある。
 人に愛されるために自分を殺すより、自分のなりたい自分に近づくよう努力する方が、よっぽどいい。

「ようし、じゃあ私頑張るわね。一緒に一儲けしましょう、ポリー」

「はい!」

 内職という秘密を共有することで、ポリーのことも信頼がおけるようになっていた。
 フィオナの生活は、これまでの人生で一番楽しいと感じながら、順調に滑り出した。
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