8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
次期正妃の嫉妬
 フィオナがカイやポリーとともに王城に戻ると、後宮の入り口でオスニエルが待ち構えていた。

「どうなさいました。オスニエル様」

 今日は最初から馬車で出かけていたからいいが、ドルフに乗って移動しているときもあるので、見つかったらと思うとヒヤヒヤする。

「入ってもいいか」

「……はあ。あ! ちょうどいいです。私も殿下に相談があったのです」

 急いで部屋に彼を招き入れる。
 ポリーが慌ててお茶の準備に入り、カイは「御用の際はお呼びください」と騎士団へと戻っていった。後宮の警備はまた別のものの担当となる。

「お前の侍女は、いまだにあの娘ひとりなのか?」

「ええ」

「なにかと不便だろう。もう数人つけたらどうだ」

 お茶が出てくるのが遅いことが気になるのか、オスニエルは不機嫌そうに言う。
 だが、ここで侍女を増やされると面倒だ。フィオナとしては、なにもかも知っていて助力してくれるポリーと、食べものさえ与えていれば、細かいことは気にしないカイがいるだけで十分である。

「気の合わない方に来られるよりは、多少不便でもポリーがいてくれれば十分ですわ。ポリーはドルフのことも好いてくれてますから、安心できるのです。身支度などは自分で出来ますし」

 それに、オスニエルは眉根を寄せる。

「お前は王太子妃だぞ?」

「ええ。ですが側妃です。公の行事に出ることはほとんどありませんから、身支度に手がかかることもそこまでありません。これまでも自分のことはある程度自分でしていましたし、そこまで優遇していただかなくても結構です」

 フィオナが笑顔で返すと、オスニエルは不機嫌そうに黙りこくる。

「あの……」

「あのな」

 しばらくの沈黙ののち、ふたり一緒に話しだしてしまう。フィオナが「どうぞ」と引けば、オスニエルも「お前から言え」と譲らない。
< 94 / 158 >

この作品をシェア

pagetop