きっと100年先も残る恋
再会
「あれ」

右上から声がした。

スマホから顔を上げて声の主を見上げる。

「及川の、だよね?」

そう言うその人を、たしかに私も知っていた。

「あ、恵麻の」

彼氏の友達さん、というところを同じく省略する。

「どうも」と彼は軽く会釈して、「隣いい?」と私の右隣を指してきた。

「はい、全然」

私は愛想笑いを浮かべ、誰も座ってない隣の座席に軽く視線を投げた。
その人はコーヒーが乗ったトレイをテーブルに置いて、イヤホンを取り、隣の、といっても私と繋がり続けてる壁に這うソファー席に腰を落とす。

19歳。
上京して半年。

同じ学科の友達、恵麻から誘われたバーベキューに来てた人。

恋人の及川くん以外知らない人たちばっかりで嫌だから一緒に来て、と恵麻に言われて渋々ついていったやつ。

及川くんの地元の友達だという集団の中に彼はいた。

軽く話したけど、その時は挨拶程度に終わった。

「あれ、ごめん、名前もう一回教えてもらっていい?」

ソファーに左手をついて、少し前傾姿勢で聞いてきた。

「矢野です」
「やの。下の名前は?」
「英子です」
「やのえいこ」

彼は一字一字、口をオーバーに動かして確認する。

「はい、矢野英子。すみません、私も名前聞いていいですか」
「俺、高松って言います、高松雄介」
「たかまつゆうすけ」

そう言うと「はい」と軽く笑って頷いた。

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