蒼春
『先輩にサーブを打った時、みんなに言われた言葉が聞こえてきた気がして。あの時のこと思い出しちゃったんです…。』

泣くのを我慢して頑張って話そうとすると、突然何かに包まれた。

驚いて顔をあげると、先輩の制服が目に入った。

いつの間にか隣に来ていた先輩は

「…教えてくれてありがとう。無理に聞いちゃってごめんね。」

といいながら背中をさすってくれた。

『私、先輩に嫌われるかもって思ったら、怖くなっちゃって…。』

そう言いかけると先輩に抱きしめられる。

「俺が乃蒼ちゃんを嫌いになるわけないでしょ?朝練手伝ってくれたし、おにぎりまで作ってくれたじゃん。」

そう思ってくれてたんだ。

「すごい嬉しかったんだよ?ありがとう。」

先輩は優しく言った。

…嬉しかった。

こんな自分を受け入れてくれる人がいるなんて…。

『こっちこそ、話聞いてくださってありがとうございました。』


だいぶ落ち着いてきたので、先輩がもとの席にもどる。

なんだか、心のもやもやがなくなった気がした。

『ミルクティー、冷めちゃいましたね。』

「大丈夫だよ。ここのやつ冷めてもすごく美味しいから飲んでみて?」

言われた通り飲んでみると、確かにおいしかった。

『美味しい⋯』

「でしょ?気に入ってもらえてよかった。……ねぇ、乃蒼ちゃん。」

『はい。何ですか?』

「よければ、また朝練手伝ってくれない?」

『いいですよ。』

「え、ホントに?よかったぁ。」

と言うことで、私と先輩の朝練はこれからも続くことになった。
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