蒼春
蓮の部屋の前を通り過ぎようとした時、ドアが開いて誰かが出てきた。

『わっ!』

「うわっ、ビックリしたぁ。乃蒼ちゃんじゃん。お邪魔してます。」

一ノ瀬先輩だった。

う、嘘…。めっちゃびっくりしちゃった。


実は、先輩の前で泣いた日から先輩を見ると変な気持ちになるのだ。

しかも、1日のうちに何回も先輩の姿を目にするようになった。

しかも、前はそんなに見なかったのに、時々先輩を見つめたままぼーっとしてしまうこともある。

「……えっと、乃蒼ちゃん?俺の顔になんかついてる?」

目の前で先輩が手を振っている。

『は、はい!だ、大丈夫です。』

「ふっ、会話になってないよ?」

先輩に笑われてしまった。


「お、乃蒼!お帰りー!」

『乃蒼ちゃん、お帰りなさい!お邪魔してます!』

部屋を覗くと蓮と徳島先輩がこちらへ手を振っていた。

『た、ただいま。今日はなんで蓮の部屋にいるんですか?』

徳島先輩に聞くと、隣の蓮が気まずそうに「俺が呼んだんだ…。」と言った。

お、何をやらかしたんだ?

…まあ、だいたい想像つくけど。

「こいつ前回のテストでやらかして、今回のテストで全教科60点以上取らないと試合に出れないんだよ。」

『そ、蓮への特別ルールが適用されちゃったわけ。』
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