婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
六章 真実
 戦場の宿営地としてはいやに豪華なその部屋で、イリムはゆったりと椅子に腰かけ自身の側近からもたらされた報告を聞いていた。話を聞き終えたイリムはふふんと満足気に鼻を鳴らす。

「なるほど、いい作戦だ。あの男の断末魔が楽しみだな」
「ナルエフの王子はよほど弟が憎いのでしょうね」
「情けない男だがな。でもまぁいい。あの男を殺すだけでティラが手に入るのなら、ありがたいことだ」

 イリムは右手に握っていた長剣を高くかがげ、ぺろりと舌なめずりをする。気分が高揚するのを感じた。自分に屈辱を与えたあの男にこの手でとどめをさす。愉快でたまらない。

「ナルエフ軍にもぐりこませた駒とはしっかり連絡が取れているのか」
「はい、準備は万全です。必ずレナート将軍をとらえてくることでしょう」
 ナルエフ軍のなかにスパイを潜りこませることはあちらからの提案だった。イリムは腕がいいと評判の十数名をナルエフへ送った。あとはあちらの采配で、スパイはレナート軍の懐深くに入りこんでいるはずだった。

「では、私はこれで。万事、作戦通りにすすめますので」

 頭を下げ退出しようとする側近に、イリムは声をかけた。
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