強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている
3章 好かれる方法
 結局しばらく蚯蚓腫(みみずば)れもキスマークも消えず、一週間ほど大き目な絆創膏を貼りハイネックばかり着ていた。
 あれ以来、部署以外の人からもヒソヒソと言われるようになった。ガングロがバレたらもっと大変なことになるだろう。

「高橋さん、これ確定した当日進行プラン確認しておいて」
「ありがとうございます。確認します」
「現場の手配ってどうなってるかな?」
「手配は済んでいて警察からも使用許可申請もおりています」
「さすが高橋さん!」

 羽鳥さんは隣の空いている椅子に座り、ニコニコとまだ何かあるような顔をしていた。仕事の話ではなさそうだ。
 私は気付かないフリをして、受け取った書類に目を通した。

「俺、高橋さんと一緒の企画できてうれしいな~。高橋さんが入社してから一回も同じ企画になったことなかったもんね」
「はあ……そうでしたっけ」
「その冷たい感じもイイね!」

 納期が短いのだから仕事しろと思いながら適当に相槌をしていると、横から木下ちゃんが体を前のめりにしてこちらに乗り出してきた。険しく眉間に皺を寄せていつものおっとりとした表情とは違った。

「ちょっと、羽鳥先輩! 小鳥遊先輩には超カッコイイ~警察官の旦那さんがいらっしゃるんですよッ!」
「木下ちゃん……見たことないでしょ……」
「木下さんはわかってないなぁ〜! 高橋さんは結婚しても輝かしいオーラは健在なんだよ」
「何ですかそれ! 意味わかんないです! そういうのセクハラっていうんですよ!」

 私を挟むように羽鳥さんと木下ちゃんが言い合いを始めた。よく他人のことでここまで熱く言い合えるもんだと関心してしまう。
 ヒートアップする二人の声で周りの人たちがざわめき始めた。私のことで揉めているのを知られるのが恥ずかしく、二人を宥めた。
 パソコンのタスクバーの時刻を見るとちょうどお昼の時間だったので、まだ興奮気味の木下ちゃんをランチに誘い外へ連れ出した。
< 32 / 96 >

この作品をシェア

pagetop