僕たちには選ぶ権利がある
授業が終わるチャイムが鳴ると、生徒たちは一斉にかばんに教科書を詰め、考えられないスピードで教室を出て行く。学年集会で体育館に向かっている時などの足取りとは比べ物にならないスピードだ。

「揚羽、早く早く〜!」

「映画始まっちゃうよ」

「わわッ!ごめん!」

友達に急かされ、ぼんやりと帰って行く人たちを見ていた高校一年生の木村揚羽(きむらあげは)は慌ててかばんに荷物を詰める。今日はこれから友達みんなで映画を観に行く予定なのだ。

「あんまり急かさなくても、まだ時間あるだろ〜?」

映画を一緒に観に行く男子の友達が言う。今日映画を観に行くのは、男子が三人で女子が揚羽も合わせて四人。中性が一人だ。

「時間あるって言っても、のんびりしすぎてるとジュース買えなくなるわよ」

女子と同じ口調だが、声は声変わりをした男子の声が響く。この人物が中性の友達、川本優(かわもとゆう)だ。見た目は少し細めの男子だが、優にはハッキリとした性別がない。
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