求められて、満たされた
2.悲傷
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音楽は私を救ってくれた。
音楽は私にとっての存在理由となった。
私がそうであったように私も私の音楽で誰かを救いたいと思った。
毎日ギターを練習し、楽譜も読めるようにした。
色んな音楽を聴き、研究し、自分でも作るようになった。
そして、それを人前で歌うようになった。
初めこそは誰も聴いてくれなかったけれど、1人、2人と少しずつだけど増えていくようになった。
聴いてもらえる事が嬉しくてどんどん曲を作った。
明るい曲も、暗い曲も、どちらも作った。
私の歌を聴いてくれる人が居るという事実は私の心を満たしていった。
家族はそんな私に無関心だった。
それもあってか家に居るよりも外で歌っている方が何倍も楽しかった。
念願であった音楽の専門学校に入学してから私を囲む環境は目まぐるしく変化した。
入学してすぐに行われた学内オーディション。
私は迷わず受けることにした。
今の私の歌を評価して貰いたかったというのもあるけれど、少し自惚れていたのもあったと思う。
この学内オーディションに合格すると、音楽事務所の方々の前で歌う権利を貰うことが出来る。
言わば予選のようなものだ。
そして、本選で一位を取ると一気にデビューへの兆しが見える。