求められて、満たされた
8.変化
「木下、ユウはインフルエンザだった。木下が教えてくれなかったら俺気付けなかったよ。本当にありがとうな。」

「いえ。」

あれから3時間後くらいにマスターから電話がかかってきた。

やはり優登さんはインフルエンザだったらしい。

「それと、今日明日は店を休みにするから木下も休んでくれ。さすがに親族にインフルエンザ患者が居るのに調理は出来ないからな。色々すまないね。」

「全然大丈夫です。マスターも優登さんからインフル貰わないように気を付けてくださいね。」

「あー、気を付けるよ。それじゃあ、ユウの目が覚めてから一応君に連絡入れさせるから都合のいい時にでも返事してやって。」

「はい、分かりました。それじゃあ、失礼します。」

電話が終わるとどっと疲れが溜まった。

俊介にものすごく会いたくなかった。

今1人で居ると色々と考えてしまいそうで、俊介にそばにいて欲しかった。

自分の嫌な部分から目をそらしたかった。

電話、掛けてもいいのかな。

中高の頃は夜中でも何かあると気にせずに俊介に電話をかけていたけれど、今はそうもいかない。

俊介はもう学生じゃない。

ましてや仕事をしている。

それも時間帯が不規則な仕事だから、大事な睡眠時間を妨げてしまうことに抵抗があった。

結局、電話をかけることが出来なかった。
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