1分で読める初恋短編集
13:ここではないどこかへ
「ウチのクラスの男子ってなんか嫌だよね」
「ねー、ほんとなんか田舎っぽいよね」
 友達の悪口にうんうんとうなずきながら、心の中で反論をする。
「中にはいい人もいるかもよ」
 でも、そんなことを言えば私はこのクラスの女子の中で浮いてしまう。
 息苦しいこの生活にも慣れてきたけど、溺れてしまう不安につきまとわれている。
 そんな時に、少しだけ私の好きな人と目が合った。
 お互いに何も言わず、すぐに目をそらした。
 危なかった。
 あのまま見つめていたら「助けて」と口走りそうだった。
 呼吸が苦しくなるこの場所から私を連れ去って、どこか遠く、ここではないどこかで抱きしめてほしい。
 そんなことを思いながら、笑顔の仮面を貼り付けて空気の薄い場所へと戻る。
 いつかその日が来ることを願いながら。
< 13 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop