鬼の棲む街
遭遇




翌日





講義が終わった夕方、紗香と駅向こうのデパートへと来ていた


「小雪は何を買うか決めてるの?」


「あ〜、うん。まぁ、なんとなく?」


「フフ、なにそれ」


ハンドクリームコーナーでテスターを片手に片っ端から匂っていく


「これ、凄く良い」


ローズ系の香りを紗香に見せるけれど


「私ならこれ」


紗香はハニーの甘い香りを持っていた


「えー、これじゃない?」


更に推してみるけれど


「これ以外無理だわ」

アッサリ断られた


思わずクスッと笑ってしまうほど二人で居るのは居心地が良い


好みが被ることがないのは素でいられるってことの証みたいなもの

女子特有の群れる為に我慢して同調するなんて偽善だ


一頻りハンドクリームを堪能すると其々が好みのものを購入してフロアを移動した


「で、何を買うの?」


そう言った紗香はニヤニヤしていてプレゼントの相手を恋人か何かと勘違いしてる感じ


「・・・えっとね、ランチマット」


「ランチマット?」


「ダイニングテーブルに無かったから」


「え、もう家に呼ばれる感じ?」


「紗香、勘違いしてるよね?」


「え?勘違いって?」


「相手は男性だけど恋人じゃないわよ」


「へ?違うの?」


「違うわ。お礼なんだからね
それに、父様くらいの年齢の人なの」


「・・・そっか」


「そーよ」


ガッカリした風の紗香を慰めていれば

あっという間にお互いにクスクス笑っていて居心地の良さに更に笑った






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