鬼の棲む街
鬼の話
午前中の講義を欠伸を何度も噛み殺しながらやり過ごすと
「今日は帰るね」
学食へ行くという紗香に手を振った
・・・
目を覚ましたのは午後八時
「寝過ぎ」
これはこれで不味い
たっぷり寝たお陰で朝のようなダルさはないけれど代わりに頭がボウとする
お昼ご飯を食べなかったからお腹は空いていて
どうしようかと悩んでいたら携帯電話の通知音が鳴った
それは、紗香からだった
[今日はヨガの日]
添付された写真は誰かに撮ってもらったのか
アクロバティックな状態でハンモックヨガをしている紗香が写っていた
[調子どお?]
[たっぷり寝たよ]
単なる寝不足だけど不安定な気持ちには変わりない
それを心配してくれる紗香はやっぱり良い子で
[お腹空いた]
素の自分でいられる
[まぢ?私、今夜はマクロビの日]
[ハハハ、今夜はゆっくりするね]
[はーい]
可愛いスタンプが並んで気持ちまで楽になった
結局・・・
出掛けるための支度も面倒になって
冷蔵庫に入っているヨーグルトとフルーツで空腹を満たしてその日を終えた
・・・
翌朝
[何してる]
受け止め方で意味すら変わるような一言が白から届いていた
「・・・どういうこと?」
寝起きの頭は考えることを直ぐに諦めて
先にシャワーを浴びることを選んだ
そして・・・
「・・・っ」
支度を済ませてアプリを開いた途端に飛び込んできたのは
携帯を見つめながら返信を待っているという大量のスタンプだった