家出少女は不器用王子と恋をする。
偲と颯
シャっとカーテンを開ける音が聞こえ、部屋に優しい日光が降り注いだかと思うと、私のすぐそばで颯の声が聞こえた。

「偲、おはよ」
「お・・・はよ・・・・・」

重たい瞼をこじ開けると颯は私の目の前で微笑んでいた。

「は、はは、は、颯!ちっ、近い!」
「いくらなんでも驚きすぎでしょ。昨日のが近かったじゃん」

思わず後ずさると颯は子供のようにハハッと笑ってきた。

「顔真っ赤。早く慣れるといいね?」

乱れた髪に直すように颯が私の髪を手ぐしでといでくる。

これも過剰反応しそうになったが、何とか冷静さを保ち颯にこう尋ねた。

「そういえば今日することあるって言ってなかった?」
「うん。俺の親がどうしても偲に会いたいってさ」
「!? そ、それって・・・」
「あぁ大丈夫。昨日のようなところには行かないよ?ただここに来てちょっと話すだけ」

そうじゃなくて!!!

颯は私の不安を取り除くためにそう言ったんだろうけど、私の不安はそこではない。

颯から両親のことを聞く限り、今のところ私はろくな印象を残していたいのだ。

< 177 / 189 >

この作品をシェア

pagetop