運命なんて信じない
運命の出会い
春、4月。

私、藤沢琴子(ふじさわことこ)は22歳の新入社員。
身長は155センチと小柄で、中肉中背。
地毛であるダークブラウンのストレートヘアを肩の長さで切りそろえたボブスタイルは、どちらかというと地味でおとなしい印象を与えるらしい。
そんな私は今新入研修の期間中で、大きな会議室の片隅に座り分厚いマニュアルとにらみ合っている。

「おはようございます」
今日の研修講師、秘書課の三崎課長が会議室へと入ってきた。

「「おはようございます。よろしくお願いします」」
50人程はいる新入社員も全員立ち上がり挨拶する。

私が入社したのは、株式会社HIRAISI。
日本を代表する財閥である平石コンツェルンのメイン企業で、超一流と言われる総合商社。
大学生の入社したい企業ランキングでも常に上位に入る人気企業だ。
私はそこの東京本社に勤務することになった。
現役で地方国立大学の工学部を卒業した理系女子の私が商社に就職なんておかしな話だと思うが・・・色々と事情があって今ここに座っている。

「立花さん」
講師の三崎さんが、私の隣に座る女性を呼んだ。

「はい」

返事をして立ち上がる彼女は、立花麗(たちばなうらら)22歳。
私と同じ新入社員。
身長170センチの長身で色白、ぱっちりとした二重の目と通った鼻筋に存在感ある唇は、本当に雑誌から飛び出してきたよう美女だ。

「資料の18ページから読んでください」
「はい」

三崎さんの指示で、麗が新人研修用のマニュアルを読み上げ始めた。
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