運命なんて信じない
「私、何かしましたか?」

美優さんの挑戦的な眼差しの理由が思い当たらなくて、つい口走った。

クスッと、翼が笑う。

「琴子、いいから本題に入りなさい」
麗がたまりかねて口を出した。

ああ。
そうだった。

「美優さん。これ、何ですか?」

私は真っ直ぐに美優さんを見て、写真を差し出した。

ふふ。
一瞬、美優さんが笑ったように見えた。

「こんな物が世間に出れば、みんな困ったことになります。誰の特にもなりませんよ」
不思議に思っていた事をストレートにぶつける。

しかし、

「そうとは限らないわ」
美優さんの突き刺さりそうな視線が、私に向けられた。

睨み付けるように私を見る美優さん。

「私はあなたが出会うよりずーっと前から賢介さんのことが好きだったの。愛しているって気持ちは誰にも負けない。いつか私の方を振り向いてくれると思っていたわ。それなのに・・・」

「私は何も・・・」
何もしていない。

何も求めてはいない。

「ただの居候ですって?大嘘つき」

そんな・・・
「私は本当に」
ただの居候なんです。と言いかけて、言葉を飲んだ。

確かに、私は賢介さんに惹かれている。
その気持ちに、必死にストップをかけている。

「あなたは、自分でも分かっているはずよ。賢介さんが今誰を愛しているのか分かっていて、気付かないふりをしている。卑怯者!」

憎しみの込められた言葉に、私の心が折れていく。
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