運命なんて信じない
そして、連れて来られてたのは都内のホテル。
確かここも平石コンツェルンの系列ホテルのはずだ。
正面エントランスの前で車を降り、そのまま客室に向かう賢介さんの後ろを私は無言で歩いた。

「入って」

エレベータに乗り絨毯敷きのと廊下を歩いて着いたのは、高層階の高そうな客室。
スイートルームらしく奥にはベットルームが見える。
この部屋、一体いくらだろう?
そんなことがまず頭に浮かぶのがいかにも庶民だ。

部屋に入ると、賢介さんが着ていたジャケットを脱ぎ、ソファーにかける。
そしてクルッと振り返り、怖い顔をして私を睨んだ。

「ごめんなさい。迷惑をかけてしまったことは反省しています」
瞬間的に謝ってしまった。

いきなり警察に呼ばれてさぞ驚いたことだろうし、きっと失望させたに違いない。

「違うよ。迷惑をかけたとか、そういうことはどうでもいいんだ。俺は、琴子が危ない目に遭っているときに一緒にいたのが俺でないことが嫌なんだ。俺の知らないところで危ない真似をするな」
「ごめんなさい」
と謝ってしまったけれど、何か違和感が・・・

「琴子、この際だからはっきりと言っておく。俺は琴子を妹とは思っていない。出来ることなら、伴侶として一生側にいたいと思っている」

そ、そんな・・・
私は黙り込んでしまった。

きっと今、私は告白された。
それも、超エリートの、超超イケメンの、誰もがうらやむハイスペックに。
でも・・・素直には喜べない。

私が賢介さんにふさわしくないのはわかっている。
それでも、出来ることならもう少しだけ賢介さん側にいたかった。
だから、昔のことは話したくなかった。
きっと、私自身も賢介さんに恋をしはじめているんだと思う。
惹かれていく気持ちを、住む世界が違うからと必死に押さえてきた。
でも、もう無理かも。
こんな風に告白されては、誤魔化すことは出来ない。

はああー。
大きな大きな溜息をついて、私はすべてを打ち明ける覚悟をした。
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