【短】泣きたいほどに叫びたいほどに、私はただきみが好きだから
それは、中学生活最後の日。
私は他の生徒がそれぞれ、思い思いの気持ちを胸に、学校を後にする様を、教室の窓に保たれたままで、無心で見つめていた。


「好き、だったんだけどなぁ…」


ぽつり


口唇から零れ落ちた言葉が自分の胸を抉る。

私にそんな思いをさせるのは、この世界でたった一人だ。

彼、長谷川岳人は、私と一年の時からずっと同じクラスで、ほぼ腐れ縁の仲だ。

何がきっかけかは忘れてしまったけれど、気付いたら私と仲の良いグループの真ん中にいて、それから気になり出すのにさほど時間は掛からなかった。

多分、一目惚れだったんだと思う。
…視線が合った瞬間から、好きだったんだと思うんだ。

でも、好きだからこそ、相手のことは小さなことでも分かってしまうもので、岳人が何を思っていて、感じていて…誰のことを気にしているのかなんて、もう手に取るように通じてしまっていた。

それは、きっと私と岳人が男女を超えた親友という存在になってしまったから。

親友なんて…そんな、苦しくて辛い鎖なんていらないのに、重くのし掛かる太くて灼かれるような鎖は、日毎に私と岳人を雁字搦めに、していった。
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