私がまだ好きなこと、君は知らない


中学2年生のとき。
私は同じ部活の同級生を好きになった。


彼は私より少しだけ背が高くて、長めの黒髪がよく似合っていた。


彼は1年生のときはあまり部活に来なくて、話したことがなかった。
でも、2年生からは毎日顔を出すようになって、夏休みの部活で私たちの距離は一気に縮まった。


彼とはいろいろなことを話した。

特に覚えているのは、憧れの恋愛シチュエーションだ。
お互いの憧れが一致していなかったから、忘れられない。


彼と話すときは、ほかの男子と違ってなんだか楽しかった。

きっと、このときから彼のことを特別に思っていたんだと思う。


恋かもしれないと自覚したのは、夏も終わるころだった。

女子と話すことが苦手だという彼が、私以外の女子と話しているところを見かけた。
私がよく知る、柔らかい笑顔を向けていた。

胸が痛くなったことを、今でも覚えている。


それでも告白する勇気なんてなくて、ずっと友達として過ごしていた。


そして月日は流れ、2学期がもうすぐ終わるというある日、彼から告白された。


「付き合って」


部活終わり、廊下を2人で歩いているときのことだった。

耳元で囁くように言われ、私は驚いて頷くことしかできなかった。


それからダブルデートをして、これから冬休みというとき、私は彼から手紙を受け取った。


『別れるんじゃなくて、友達に戻るだけ。多分君には僕は似合わないと思う』


混乱した。
何が書いてあるのか、すぐには理解できなかった。

少しずつ落ち着いて、もう恋人関係ではなくなったということだけがわかった。


2週間しか経っていなかったけど、彼なりに考えて出した答えなのだろうと、受け止めることにした。


そして私は、彼の“友達に戻る”という言葉を信じた。

また前みたいに話せる。
そう思っていた。


だけど、そんなことはなかった。


彼が部活に来なくなって、一切話せなくなったのだ。

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