禁忌は解禁される
一颯の想い
律子が亡くなったあの時。

あの時も梅雨時期の、少し蒸し暑い日だった。
また、大雨と雷が“誰か”を奪おうとしていた。


「一颯、一樹がまたお前に会いたいと言ってきてるが、どうする?」
「え?」
「は?ダメだろ!?断れよ!親父!」
「それは、一颯が決めることだろ!?
ガキは黙れ!」
「姉ちゃん、まさか…会うなんて言わないよな…?」

「ちょっと、考えさせて……」
「わかった」


「絶対…会うなよ…!一颯……」
部屋に戻ると、颯天も強引に部屋に入ってきて言われる。
「どうして?」
「なんか…嫌な予感すんだよ!?」
「うーん。そうだね…。
それより、早く行かないと仕事遅くなるわよ!」
「わかってるよ!とにかく!行くなよ!絶対…!」
「わかった」

トントン━━━━━━━━━
「若、時間です」
「あぁ!わかってるよ!」
後ろ髪を引かれるように、一颯の部屋を出ていく颯天だった。

そして颯天が家を出たあと、一颯は律子の部屋にいた。
律子が亡くなってから、ずっと来てなかった部屋。
ここに来ると、楽しいこと、悲しいこと全て思い出すから。
足を踏み入れることができなかったのだ。

「ママ…私、どうすればいいのかな?
早くこんなとこ出たいのに、好きなの……颯天のことが……。どうしても……
私だってずっと一緒にいたい。
颯天とも、お父さんとも、銀くんや井田くんや他のみんなと。
でも、ママを殺したのはこの世界でしょ?」

カタン━━━━━━━

「え……?だ、誰!!?」
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