オフィスの華(令和版)~若社長と秘書のHONEYなヒミツの関係~
栗原さんはベンチから立ち上がって、煙草を吸い始める。
先ほどまで、気さくな雰囲気を漂わせてのに、彼は急に真剣な顔で不敵な目つきで私を見て、そっと言った。


「教えてもいいけど…タダでは教えない。これはトップシークレットだから…一億円どう?」

「い、一億!!?」

余りにも桁が違うので、栗原さんに訊き返す。

「冗談ですよね…栗原さん」

「俺は本気だけど。君が真面目に『泡沫』のホステルで稼いで、セレブなパトロンを付ければ…いいんだよ。華さん」

栗原さんが煙草を咥え、空いた手で私の眼鏡を奪った。

彼の眼鏡の奥の切れ長の瞳が妖しく光る。

「返してください…」

「どうぞ…」

彼は直ぐに眼鏡を返してくれた。彼の口許に咥えていた煙草の煙が鼻の中に入って来た。


「一億準備出来たら、いつでも…情報開示はしてあげるよ…」



「一億なんて無理な話です…」


「君には社長が居るじゃない。彼は御曹司だ」

栗原さんは煙草を指で挟み、口許から離し、青い空に向かって紫煙を吐き出した。

「さてと腹も一杯になったし、一服もした。俺は先に帰るよ。染中さん」

栗原さんは先に本社ビルへと戻って行った。

―――私にお兄さんって・・・母に訊かなきゃ…

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