元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
魔王様はキスがお気に入り

***



 あの日から、ティアリーゼは一応シュクルの恋人になった。

 ティアリーゼから特に伝えていないにもかかわらず、メルチゥは嬉しそうにしていたり、トトは苦い顔をしていたりと、どうやらシュクル経由で広まっているらしい。

(……事実だからまぁいいとして)

 満月のきれいな夜、ティアリーゼはベッドの中で寝返りを打つ。

 いつもは広々と眠っているのに、今日に限って狭いのはシュクルのせいだった。

 ティアリーゼが外から戻ってきたとき、この魔王は既にベッドの中で暖を取っていた。

 しれっとした様子で待っていたと告げ、なにを言っても動こうとしない。

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