見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
一、

和哉さんとの出会いは、六年前。

私はまだ大学生三年生で、バイトに励んでいた時のことだった。


私、羽田野(はたの)結衣(ゆい)のバイト先は通っていた大学の近くのおしゃれなカフェ。

実家は下町にあり、古めかしさ満載の小さな酒屋を営んでいるからか、都心の洗練された雰囲気の中で働いてみたいと憧れていたのが一番の理由である。


「いらっしゃいませ」


店内に客が入ってきて、条件反射的に声を発する。

そして、その客が常連さんであるのに気づいた後、もうこんな時間かと午後九時を指している時計へ目を向けた。

前髪は少し目にかかるくらいで、艶のある黒髪。色白に、切れ長の瞳。

彼が入ってくるとその場に凛とした空気が広がり、何より、女性のお客さんがそわそわするくらいイケメン。

年は私より少し上くらいで、学生ではなく、きっと社会人。

なぜそう思うかは、店長曰く、着ているスーツが高級海外ブランドのものばかり、ってところから。

年齢が大きく離れているようには見えないのにお高いものばかりで身を固められるのは、きっと大企業にでも勤めているのだろうとまで、想像は膨らんでいる。

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