見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
二、

和哉さんとの恋に敗れて妊娠が発覚した後、私は勤めていた会社を辞めて、酒屋「ハタノ」を営む実家へと戻った。

つわりで低迷していた日々を乗り越え、少しずつ大きくなっていくお腹に、胎動まで感じるようになると、本当に私の中に新しい命が宿っているのだと実感がわいてくる。

時々……いや、毎日のように、ふとした瞬間、和哉さんのことを思い出しては、いまだにどうしてと悲しくなる。

和哉さんのお母さんと話をした後、やっぱりもう一度くらいちゃんと話ができないかと彼に何度か電話をしてしまったのだが、一ヶ月も経たないうちに「お掛けになった電話番号は現在使われておりません」とアナウンスが流れてしまったのだ。

私とは話すらしたくないと、もしくは必要ないと思われてしまっているのかと絶望し、しばらく塞ぎ込んでいた。

両親と、そして弟は、今にも和哉さんの元へ怒鳴り込みそうな勢いで、私の代わりに怒ってくれた。

彼は今海外にいると打ち明ければ家族は歯痒そうにし、実家はどこにあるのかと言う話にもなったけれど、ヤギサワホールディングの社長の息子だという素性を明かす気にはなれなかった。

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