幼かった恋心
中学1年生の夏休み直前
それは唐突に動き始めた。


「光志(こうし)って春奈(はるな)のこと好きらしいよ!」


恋愛に過敏となっている中学生の話題で、好きというのは必然的に”恋愛的な意味で”というのがカッコ付けされる。


私の場合もそうだった。


自分の恋よりも、漫画の中にいる主人公達の恋の方が断トツで好きだった私は、その話題を


「きっとただの噂だよ。光志くんとはお友達だしさ。」


と、笑い話へと変えた。自分自身も放課後には既に忘れ、当時同じクラスだった光志くんとも普段通りに話していた。


というのも、光志くんと私は小学校ではほぼ話をする事も無く、違うクラスであれば決して話はしない仲だ。


だから本当に私はそれをただの噂だとして流していた。


ーーーその風向きが変わったのは1年後の中学2年生の春。


私は2年連続で光志くんと同じクラスとなった。


光志くんの出席番号近くに仲のいい女友達……美紅(みく)が居たことから、光志くんとも話す機会は1年生の時以上に増えていった。


周りから見たら光志くんが私に好意を抱いているのは見え見えだったらしいが、美紅も鈍感だったらしく、それを追求する事もなかった。


光志くん自体も大人しい性格のせいか、自分から私に話しかける事はほぼ無い。
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