まだ、青く。
#8 家族なんです。
「ん...んん?」

「おお、起きたか?」


どこかで聞いたことのある声のような気がして、私は重い瞼をこじ開けた。

すると、視界の先にはいくつもの乗用車が整列していて、フロントガラスの前には日向ぼっこをするように猫が丸くなって気持ち良さそうに眠っていた。


「もしかして...キビちゃん?」

「良かった良かった。キビが分かるなら正常じゃ」


ということは、この声は...


「汀次さん?」


私の言葉にグーサインが出た。

それは良いのだけれど、

いや、良くない気もするけど、

それよりも何よりも...

ここはどこ?


「ここは新静岡駅前じゃ」


まるで私の心を見透かしたかのように的確な反応が返ってきた。

でも、どうなってこうなったのだろう。

確か私は昨日の夜家を飛び出して、知らず知らずのうちになぜか港の方に向かっていたみたいで、気付いたら凪くんがいて、それで......。


「ご両親には許可を得てここに来ておる。凪も腹をくくったらしい」

「えっと...それはどういう?」


汀次さんは勢い良く後ろを振り返った。

そして、私の鼻先に銃口を向けた。


「行くんじゃよ、東京に。鈴ちゃんのお母さんを捜しにな」

「えっ、で、でも学校...」

「今日は土曜じゃ。なーに、忘れとったのか?」


汀次さんがそう言った、直後だった。

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