蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


「あの……柚瑠木(ゆるぎ)さん、大丈夫ですか?」

 目が覚めたのだと思って訪ねてみても、彼から聞こえるのは「ハアハア」と荒い呼吸音だけ。私の事をきつく抱きしめる柚瑠木さんの腕の力は全く緩みそうになくて。
 私は少しでも柚瑠木さんに落ち着いて欲しくて、彼の背に腕を回しました。

「……かないで……ねがい……せい……」

 もしかして、行かないで……でしょうか?柚瑠木さんはいまだ夢の中、誰かを必死に引き止めてるのかもしれません。
 柚瑠木さんがこんなに必死になる相手とはどんな方なのか……気にならないと言えば嘘になります。ですが今は私に甘えるようにしがみつく柚瑠木さんの背を撫でてあげたいんです。
 彼の呼吸が少しずつ落ち着いて来るのを確認して、私はもう一度柚瑠木さんに声をかけました。

「柚瑠木さん、私の事が分かりますか?私は月菜(つきな)です。」

 私の名を伝えると、柚瑠木さんがピクリと反応しました。どうやら私の事が分かるようになったみたいです。ゆっくりと私を抱きしめていた腕が離れていき、柚瑠木さんが顔を上げました。
 
「月菜さん……」

「ああ、汗びっしょりですね。ちょっと待っていてください。」

 急いでタオルを取って来て、柚瑠木さんの汗を拭いてあげます。私が出来るとこだけ拭き終わると、柚瑠木さんにタオルを渡しました。

「月菜さん、貴女は……」

 柚瑠木さんが何か言いかけて言葉を止めたので、私は首をかしげます。もしかして何か言いづらい事なのでしょうか?

「何でしょう?そうだわ、汗が気持ち悪いなら今からシャワーを浴びて……」

 そう言いかけた時、柚瑠木さんに手首を掴まれ、グッと引っ張られたんです。


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