あの事件の後は柚瑠木(ゆるぎ)さんの言っていて通りしばらくバタバタしましたが、少しずつ元の二人の生活に戻っていきました。
 「覚悟してください」と言う柚瑠木さんの言葉に時々ドキドキもしたりしましたが、特に私たちの関係はまだ進展がなく……本当に柚瑠木さんは私の事をどう考えているのでしょうか。

 そんなある日……

「え?お料理教室に通ってもいいんですか、それもあの香津美(かつみ)さんと?」

 香津美さんは柚瑠木さんの幼馴染の狭山(さやま) 聖壱(せいいち)さんの奥さんで、あの時の事件で私を庇ってくれた女性です。彼女にはもう一度会いたいと何度も思っていたので、柚瑠木さんの提案はすごく嬉しかったのです。

「香津美さんもこのレジデンスに住んでますし、これからは月菜(つきな)さんにも色んなことを話す相手がいた方がいいでしょう。彼女なら月菜さんを安心して任せられますし。」

 柚瑠木さんがこんな風に私の事を考えてくれるなんて。最初の頃は何を聞いても「貴女の好きにしてればいい」と言われるだけだったのに。

「でも、お料理なら使用人の希子(きこ)さんにも教えてもらっています。それなのに……」

「料理教室は香津美さんと仲良く話せる時間だと思えばいいんです。それでも月菜さんが嫌ならば断わりますが?」

 そんな!スマホを取り出そうとする柚瑠木さんの手首を掴んでしまいました。だって、わたしも香津美さん達と仲良くなりたいです。誘われて嫌なわけがありません。

「断らないでください。私、香津美さんと料理教室に通います。」