甘溺愛婚 ～性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される～

契約結婚だと思え

「この結婚は契約結婚のようなものだ。アンタもそれを十分理解して俺のところに来るんだな。」

　その男は会ってすぐにこの言葉を言って、さっさと帰って行ったの。用意された食事に手を付けるどころか、椅子にさえ座ることも無く。
　
　【契約結婚】

　彼が言いたいことはよくわかる。彼は大企業の御曹司で、私はそこそこ大きな会社を経営する社長の姪。
　おじさまの会社が融資を受け、代わりに彼の会社にとってかなり有益な仕事を頼むことになっているらしい。そんな関係を長く続けましょう、という意味での私たちの結婚。
　本当は相手が裏切らないようになんじゃないかしら、なんて思うのは私だけなのかな？

　もちろん契約はそれだけではなく、彼から渡された手紙にはこの結婚に関しての私たちの決まりごとがいくつか書いてあったわ。

　私の結婚なんてしょせんこんな物よね。ただ一度だけ恋愛してみたい……そんな願いも叶うことなく、よく知りもしない男の妻になるのだから。
　きっと今までの行いが悪かったのよね、性格の悪さは自分で分かっているもの。

　ただ……この結婚で私が理解できないでいることが、一つだけある。
　それは結婚後すぐに態度を急変させ、私を溺愛し始めた俺様な夫の事なのだけれど。