甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
契約と覚悟と意地と


 聖壱さんから頼まれた事は……いつもと変わらない毎日を送ってほしいという事と、空いた時間は外に出て一人で行動して欲しいという事だった。
 今までは聖壱さんと取ることが多かった昼食も、テナント内のお店や少し離れた場所にある喫茶店などで過ごしていた。

 私が一人になればすぐに相手も近づいて来るかと思ったけれど、向こうも慎重なのかなかなかそれらしき人物が見つからない。
 月菜さんに何かあったともまだ聞いてないけれど……

 そう思いながら食後のコーヒーを飲んでいると、隣の席に落ち着いた感じの年配の男性が座った。
 喫茶店の中にはまだいくつも席は空いている、わざわざ私の隣に座ったという事は――――

「貴女が狭山 香津美さんですね?少しお話しよろしいですか?」

「……わ、私に何のご用でしょうか?」

 いつもの強気な狭山 香津美は出せない。この人たちには私の事を怖がりで、か弱いお嬢様だと思ってもらわなければならない……
 さあ……簡単に思い通りになる女だと思って、余裕ぶって隙を見せて頂戴よ。

「そんなに怯えなくて大丈夫ですよ、香津美さんが私たちの言う事を聞いて下さればすぐに済みますから……」

「あの、私はどうすれば……?」

「私達と一緒に来てください。香津美さんが協力してくだされば、とても良いものが見れるはずですから。」

 どうやら私の演技にうまく騙されてくれたようで、男性はそう言ってすぐに仲間らしき男性を呼ぶと私をその場から連れ出した。


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