清瀬(きよせ)智春(ともはる)っ、またアナタなの!?」


 登校ラッシュで賑わう朝の校門前。

 この学園の風紀委員を務める私は、今日も“天敵”であるこの男を厳しく取り締まっている。


「……いんちょー、朝から元気よすぎじゃない?」


 ふわぁと欠伸を洩らして私の前を通り過ぎようとする男の腕をガシッと掴み、校舎の外へ追い出す。


「え、何すんの?」

「何すんの、じゃないわよ!! 胸に手を当ててよぉく考えてみなさいっ」


 キョトンとする清瀬を睨み付けて、ブレザーのポケットからサッと『黒染め用スプレー』の缶を取り出す。

 両手をクロスし、清瀬の頭目掛けてプシュッとスプレーを噴射しようとしたら、「ストップ」と手首を掴まれた。


「……あのさ。いつも思うんだけど、いきなりそれぶっかけようとすんのやめない? 間違って目に入ったらどーすんの?」

「そう思うなら、そっちこそいい加減髪を染め直してきなさいよ! いつまでそのド派手な金髪頭でいるつもり!?」

「金パって、これイエローベージュ……」

「細かいことはどうだっていいのよ。どのみち、アナタが校則違反してるのは紛れもない事実なんだから!」


 そうよ。今回こそ絶対見逃してなるもんですか。

 ゆるめのパーマをあてたヘアスタイルとか。

 両耳に付けたピアスとか。

 第三ボタンまで外して緩く締めたネクタイとか。

 ルーズに着崩した制服とか。

 ほんのり香るシトラスの香水とか。

 どれかひとつでもNGなのに、この男は人が何度注意をしても直してこない。