新しいクラスにもすっかり慣れた、5月中旬。
 
 新緑の芽吹く季節に、今日も私は一人苛立ちを募らせている。


「やっぱり、うちの学校で一番イケてるのは清瀬くんだよね。セレブなのに気取ってないし、女慣れしてるし?」

「でもなんか噂によると、去年くらいからパッタリ女遊びやめたらしいよ? 誘っても全然乗ってこないって」

「その話聞いたことある! 確か、高等部に入ってすぐくらいだよね? 女遊びしなくなったのって」

「けど、彼女いるって話も聞かないし、不特定多数と関係もつのが面倒になっただけじゃない?」


 ガヤガヤと賑わう、昼休みの教室内。

 四限の授業を「眠い」という理由だけでサボッた清瀬について同じクラスの女子達がキャーキャー楽しそうに話す姿を白けた目で見ながら、私は深くため息をついている。

 くだらない。

 清瀬が女遊びしようがしまいがどうだっていいわ。

 そんなことより、奴のサボり癖の方が問題よ!

 教室の隅でひとりランチを終えた私は、机の上にノートを広げ、せっせと四限の授業で板書された内容をノートに書き写している。

 それもこれも全部、隣の席のアイツ――清瀬のため。

 ギンッと左隣の席を睨み付けて、きつく奥歯を噛み締める。

 なんだって私がこんなことを……と腹立だしく思いながらも、仕方がない。

 清瀬がサボるのは、大抵いつも数学の授業。

 担当しているのは、うちのクラスの担任・亘く――じゃなくて、平井先生。

 温厚な性格で授業の教え方もうまいので、保護者からの信頼も厚く、大勢の生徒から好かれている。まさに教師の鏡のような存在。