いつもと違う、オールバックに固めたヘアスタイル。

 見るからにブランド物の高級スーツ。

 普段の脱力した様子とはまるきり正反対の『デキる男』感を丸出しにした清瀬と、何故か現在、ホテルのスイートルームで二人きりになっている。


「その辺、適当に座っていーよ」


 シュルリとネクタイを解いてワイシャツのボタンを外しながら、清瀬がベッドの前で固まる私に声をかけてくる。


「……っ!」


 い、今更だけど、なんでコイツについてきちゃったの私!?

 ちょっと一旦頭の中を整理しないと。

 えーっと、最初は亘くんのおめでた報告にショックを受けて。

 それから逃げるようにレストランバーを出て。

 エレベーターの中で泣いていたら、そこに偶然清瀬が現れて。

 何も話せる状態じゃない私を気遣ってか、「ひとまず人のいない場所に行く?」って聞かれて、つのこのこ着いて来ちゃったけど。

 冷静に考えなくてもまずい状況に、今頃慌ててきた。


「や、やっぱり帰るわ! お邪魔しまし――」

「こんな夜遅い時間に帰すわけないじゃん。馬鹿じゃないの?」


 くるりとUターンしようとしたら、パシッと手首を掴まれて。


「へっ、変なことしたらタダじゃおかないからっ」


 前に向き直された私は、毛を逆立てて威嚇する猫のように警戒心丸出しで叫んだ。


「まだ手ぇ出してないのに、ちょっと触っただけで酷くない?」

「う、うるさいわね! 色々と前科がありすぎて信用出来ないのよっ」

「あ―……。言われてみれば、しょっちゅう押し倒してるもんね?」


 納得した様子で私から手を離すと、清瀬は「これならいい?」とお手上げのポーズをして訊ねてきた。