「ほんとだったらこのまま襲いたいところだけど」


 その人はベッドの前で立ち止まると、大きな手のひらで私の頬をひと撫でしてきた。


「ん……」


 ぴくりと身じろぎする私を見てクスリと笑みを零し、ギシリと枕元に手をつくと。


「……大事だからやめとく」


 私の耳元に唇を寄せて、とびきり甘い声でそう囁いた。

 ――チュ、と額に柔らかな感触が触れたような気がしたのは……気のせい?

 クタクタになるまでプールで遊んだせいか、全く起き上がる気力がなかった私は、今の言葉をハッキリ聞き取れなくて。

 誰かが私の髪を撫でる手つきがとても優しかったことだけはなんとなく覚えていた。



 ショックだった亘くんの結婚報告。

 もしあのまま清瀬と会わないで一人で帰っていたら、一晩中泣き明かしてた。

 だから……そうゆう意味では清瀬に救われた部分があるのは事実で。

 清瀬にとっては単なる気まぐれだとしても、プールではしゃぐ内に気持ちが軽くなっていた。

 ま、本人に伝えたら変な誤解を生みそうだから言わないけど。


 ――清瀬がいてくれてよかった……。









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