そっか。疲れ切って、あのままぐっすり寝ちゃったんだ……。


「……それはいいとして」


 この状態をどうすれと?

 後ろから逃げられないようガッチリ抱き締められているせいで布団から抜け出せないし、清瀬が動く度に柔らかい猫っ毛が首筋に触れて、かあぁっと耳が熱くなる。


「……っ」


 密着した体勢に心臓が破裂しそう。

 背中越しに感じる硬い胸板や筋肉、温かい人肌に緊張して目をグルグル回していると。


「――ん……。いんちょー、おはよー」


 清瀬が寝起きの掠れ声で挨拶してきて。

 ビクッとなった私は、清瀬の腕の力が緩んだ一瞬の隙にベッドから飛び降り、口をわなわな震わせて真っ赤な顔で叫んだ。


「なっ、なんでアナタと一緒に寝てるの!? この部屋ならほかにも寝る場所があるじゃない!」

「なんでって……いんちょーと寝たかったから?」


 くあ、と欠伸をしてベッドから起き上がる清瀬。

 眠たげに目を擦りながら絨毯に足をつけると、客室用冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ペットボトルの蓋を開けてゴクゴク飲み出す。

 そして、口元の水滴を指で拭うと、じっとこっちを凝視してきて。


「な、何よ?」

「いや、いい眺めだなって」

「!?」


 清瀬に指摘されてバッと自分の胸元に目を落とすと、バスローブの前がはだけて谷間が覗き見えてる。

 慌てて胸元を隠すと、清瀬は「顔洗ってくる」と言って、スタスタと洗面所の方に歩いて行った。