「ちょっと待ちなさい! 毎日毎日、何度注意したらその髪色を元に戻してくるのっ」


 ――ガシッ!

 目の前を平然と素通りしかけた清瀬の腕掴んで前に向き直させる。

 清瀬は耳に差していたイヤホンを片方取ると、さも今私の存在に気付いたような顔で「おはよー、いんちょー」と挨拶してきた。


「『おはよー』じゃないわよ! とにかくまずはネクタイを締めてキチンと身だしなみを整える!」

「めんどいからいんちょー結んで」


 シュルリとネクタイを外して、私の手のひらにポンと乗せてくる。

 ん、と背を屈めて私にネクタイを締め直すよう促してくる清瀬に、周囲の生徒はザワつき、こっちを見ながらヒソヒソ話。

 休み明けの登校日。校門の前で服装検査をしていた私は、こめかみの辺りに青筋を何本も立てて清瀬にネクタイを突き返した。


「私はアナタの家の使用人じゃないの。ネクタイぐらい一人で結びなさいっ」

「別に一回くらいいーじゃん」

「ならそっちも一回くらい人の言うこと聞いて校則通りの格好をしてくれないかしら? それにそのピアス、学校にしてこないでって何回も注意してるでしょう!」

「やだ。これは好きな子がくれたやつだもん」


 以前私があげたフェイクピアスを外すよう注意すると、清瀬は呆れるような冗談を言い出し、手で耳元を隠した。

 好きな子って……。