『いい加減、こっち向いてよ』


 不意打ちのキスの後、切なさを帯びた真剣な眼差しで告げられた予想外のひと言。

 それはまるで清瀬が私のことを「好き」だって言ってるみたいで。

 そんなの……。


「ありえるわけないでしょ!?」


 ――ガタン……ッ!

 突然パイプ椅子を後ろに引いて立ち上がった私に、ザワッとなる各学年の風紀委員達。

 清瀬にキスされたその日の放課後。特別棟の二階にある会議室で月一回行われる風紀委員の集まりの場で失態を晒した私は、鬼の形相から一転、顔を真っ赤にして「……なんでもありません」と頭を下げて椅子に座り直した。

 ううっ……やってしまった。

 今は服装検査についての話し合いの最中なのに。

 ジロジロと好奇の目を向けられ、ますます耳が赤くなる。

 これもそれも全部アイツのせい!

 アイツが……清瀬が私にあんなことするから。


「では次、西田さんから報告をお願いします」

「はい」


 3年生に話を振られ、コホンと咳払いしてから報告書を読み上げる。

 その間も頭の中は清瀬のことでいっぱいでモヤモヤする一方だった。





 それから30分後。ようやく定例会議が終わり、帰ることになったものの――。


「げっ」


 鞄を取りに教室へ戻ると、何故か私の席に清瀬が座っていて、扉の前でピタッと足を止めてしまった。