綾取る僕ら
練習
一年女子で龍平さんの車に乗せられて球場に連れてこられた。

今日は野球。
元野球少年だった仁さんはほぼ必ず参加するから、興味もないし上手くもないのに毎週参加する。

ベンチに座ってみんなの到着を待ってると、仁さん達が姿を表した。

仁さんと麻莉乃さんとゴンさんと悠人。

楽しそう。
楽しそうだけど、私は仁さんと麻莉乃さんが一緒にいるのを見たくない。
だから別の車で良かった。

ゾロゾロとこっちに向かって歩いてくる。

途中分かれて麻莉乃さんだけ女子達で固まってたベンチに向かってツカツカと歩いてきた。

「ねーねー、聞いて」と少し荒立っている。

麻莉乃さんの周りに1,2年の女子で集まった。

「仁さ、この間の飲み会の後すごい怪しいんだけど」

唐突に飛び出してきたワード。
やっばい。
下手なこと言えない。

急に心臓が小さくなる。

「私この間行ってないじゃん。二次会の後、悠人ん家泊まったとか言ってんだけど嘘っぽい」

その口調がすごく怒ってる。

え?
もしや全てを知ってる?

でも悠人ん家に泊まったってことになってるはず。

何が嘘っぽいんだろう。

「私、二次会行ってないなー」とみんながポツポツ答える。

「だよねー、誰も二次会行ってない?」

麻莉乃さんがグルーッと一周するようにみんなの顔を見る。

「私と綾香は行ってました」

穂乃果が言う。
たしかに、私と穂乃果は二次会まで参加してた。

私も遅れて「二次会行きました」と軽く手を挙げる。

「ねー、仁どこ行った?あいつ」

「知らない?」と穂乃果と私を見てくる。
穂乃果と目が合う。

「私、すぐ帰ったんですよね」

穂乃果が答える。

「綾香は?見てない?」

麻莉乃さんのバサバサなまつげの目に見つめられる。

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