幽霊でも君を愛する
第二章 通学の合間に
家から大学までは、自転車を使っておよそ30分。急いで10分くらいで辿り着ける。決して安全な道とは言えないけど・・・
それに、今日は午前中だけの講義だ。帰ったらまた眠ればいい。
昨晩は本当に失態だった。執筆絡みの癖なのだが、ついつい熱中しすぎると、食事も睡眠も忘れて没頭してしまう。
そしてその度に、彼女である牡丹から怒られている。多分、昨日の晩も彼女に怒られながらベッドに担ぎ込まれたんだろう。記憶があんまりないけど。
本当に疲れている時に取る睡眠は、至福以上の何物でもない。今の私は全然眠気を感じない上に、5月のまだ冷たい風が顔面に直撃しても、全然平気だ。

そして、大学がもうすぐ見えてきたタイミングで赤信号に止められてしまう。でも此処まで来ればもう大丈夫、後は教室に飛び込むだけでいい。
私は止まっている時間を有効活用しようと、ポケットからスマホを取り出し通知を確認する。相変わらず変なキャンペーンやお知らせの通知ばかりだった。

「・・・??」

画面をなんとなくすワイプしていると、地方ニュースが目に飛び込んできた。しかもその現場が、丁度大学のすぐ近く。

「マンションから出火 男性一人の死亡が確認
 火事が発生したのは、○○市内の北側に位置する『紅山マンション』
 午後9時4分頃、近所に住んでいた住民から消防に通報が入り、火はおよそ数時間後に消し止
 められましたが、焼け跡から一人の遺体が発見されました。
 家事の火元となったのは、遺体のあった部屋に住んでいた男性の部屋で、警察は、焼け跡から
 発見された遺体は、その部屋に住んでいた、無職の 雪原 籠(52)さんの遺体と思われま
 す。
 また、マンションに住んでいた住民によると、籠さんは重度のヘビースモーカーであり、警察
 は、出火の原因は『寝タバコ』にあるとして、捜査を進めています。
 近所には大学や高校もあり、現場は一時騒然となりましたが、燃え広がったのは、隣接する空
 き部屋のみでした。」
< 5 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop