――あの日の軽率な自分の行動を、こんなに後悔することになるなんて思いもしなかった。
もし、あの日に戻れるなら、私は……。



――ピンポーン。

激動の年度末を乗り切ったその休み、うとうとしていたらチャイムが鳴った。

「……なに?」

今日は荷物が届く予定もないし、セールスならもちろん、お断りしたい。
ベッドから出て玄関へ向かい、ドアの外へ声をかける。

「……はい」

私の声は不機嫌全開だったが仕方ない。
だって、朝起きて洗濯なんか済ませ、お昼ごはんを食べて、天気もいいしお昼寝なんて優雅だわ、なんてベッドに入ってうたた寝をはじめたところだったんだから。

「隣に引っ越してきた楠木(くすのき)といいます。
あの、引っ越しのご挨拶に」

すぐに男の声が返ってくる。
そういえば、朝から隣はごたごたしていた。
きっと彼の引っ越しが行われていたのだろう。

「はい。
ご丁寧に……」

ドアを開けて、止まった。
だってそこには眼鏡のイケメンが立っていたから。
緩くパーマをかけた少し長めの髪、黒縁眼鏡の奥からは涼やかな目がこちらを見ている。