『おはよう、麻里恵。
そろそろ起きろ』

「……おはようございます」

スピーカーから声が聞こえてきて、目が覚めた。

『二度寝するなよー』

「……ふぁい」

あくびをしながらもそもそとベッドから出て洗面所へ向かい、顔を洗う。
あのあと、……いろいろあったのだ。
楠木さんはなにかと私にかまいたがい、電話をかければ済むのにすぐにピンポン連打した。
近所迷惑、特に楠木さんの部屋を挟んでお隣に怒られるわけにはいかないので、速攻でスマートスピーカーを買って両方の部屋に設置。

『次にピンポン連打したら、絶対に結婚とかせんけんね!』

と、私から言い渡され、それ以来、おとなしくなってくれてとても助かる。
その代わり、スピーカー越しにうるさいくらい、話しかけられるが。

「いまからそっち、行きますねー」

『うん。
もう朝食もできる』

身支度を済ませてスピーカーへ声をかけ、部屋を出る。
チャイムも押さず、鍵も開けずにドアを開けた。
予告してあるから、すでに開けてあるんだよね、いつも。
でも反対に、私には少しの間でも鍵開けっぱなしは許さないんだけど。

「おはよう、麻里恵」