アニメを観ている楠木さんの顔を、私は見ている。
ついこのあいだ、彼が好きだと自覚した。
ならばいままで、友婚ならできるが彼の求める恋愛結婚は無理、と思っていたハードルが消えるわけで。
かといって彼の求婚を受け入れられるかといえば、複雑だ。
さらに私はまだ、――あの日の真実を彼に話していない。

「ん?」

視線に気づき、楠木さんが僅かに首を傾ける。

「麻里恵、どした?」

「あー、えと。
……なんでもない、です」

笑って誤魔化しつつ、心の中では重いため息をついた。

「そうか?
ここのところ浮かない顔をしていることが多いが、まだやっぱりあれがショックか?」

心配そうに眼鏡の下で眉間に皺を刻み、庇うように彼がその腕の中に閉じ込める。

「えーっ、と……」

会社帰り、不審者につけられたのは十日ほど前の話だ。
週もかわり、ようやく最近は後ろを気にしないでも歩けるようになってきた。
とはいえ、私のほうが遅い日は楠木さんが必ず迎えに来るし、彼のほうが遅い日は待たされるんだけど。

「麻里恵に怖い思いをさせるなんて許せない。
あのとき、捕まえればよかった」