むすんで、ひらいて、恋をして
「アリス、どうしたの?」



「う、ううん、なんでもない」



あゆみちゃんにそう返事をしたものの、首をひねりながら理科室に向かった。




その夜、お母さんが作り置きしてくれたハッシュドビーフを莉生とふたりで食べていると、莉生がため息をつく。



「アリス、飯食ったら、勉強教えて。中間、マジでやばいかも」



困ったように莉生が眉をさげる。



莉生がトップの成績で入学したっていうのも、やっぱり根も葉もない噂なのかな?



自分の知らないところで完璧王子に仕立てられちゃうなんて、莉生も大変だな。



「アリスって何でも美味そうに食うけどさ、食べられないものとか嫌いなものってあるの?」



莉生に聞かれて考える。



「んー……、ハンバーグは、あんまり好きじゃないかも」



「へえ、めずらし。ハンバーグが嫌いな奴なんているんだな」



「いる、いる、ここに! やっぱり揚げ物が最高だよねっ!」



「すげえな、男子高校生なみの食欲」



「莉生がつくる揚げ物が美味しすぎるんだよ! 太ったら莉生のせいだからねっ」



「そしたら、指さして笑ってやる」



「ひっど!」



家で楽しそうに笑っている莉生は、学校にいるときとは、何かがちがう。



爽やかで穏やかな甘い雰囲気は変わらないけど。



こうしいて家でげらげら笑ってる莉生の方がいいのにな。



ま、お嬢様のフリして通ってる私が言えることじゃないけど!



そんなことを考えながら、ぼんやりと莉生を見つめていると、莉生が自分のお皿を
私から遠ざける。



「おいおい、俺の飯、奪うなよ? アリスの母さんのハッシュドビーフ、マジで美味いんだから」



「人のご飯を取ったりしないよっ!」



「ぷぷっ、すぐムキになる」



「うっさい!」



はあ。



とりあえず、ゆっくりお風呂に入ってリラックスしよう!



お嬢様のフリをするのも、なかなか疲れるし。



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