約束
“旧校舎の美術室には、卒業前に死んだ女生徒の幽霊が出るらしい”


そんな噂を耳にしたのは、もうすぐ終業式がやってくる頃、日向ぼっこをしようと中庭に出た昼休みのことだった。


「なんかねぇ、友達から聞いたんだけど、一年の男子が見たらしいよ。備品を取りに旧校舎に行ったら髪の長い女の子がいて、振り返ったその子の足は──・・・ね?」


敢えて言葉を濁した奈々未に、私は顔を引き攣らせ、沙耶子はやだぁ、と声を上げた。


こんな春日和に怪談話なんて、物好きもいいところだ。


結局のところFriend of a Friend、友達の友達の話なんて不確実な噂に過ぎないのに、無視できないのは好奇心の方が勝ってしまうからだろう。


だって、私たちは小説でも漫画でも映画でも、いつもほんの少しの非日常を求めている。


平々凡々な人生を彩る何かを、探しているんだ。
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