7歳の侯爵夫人
「旦那様の恥は、最小限にするよう努力致しますわ。どうぞ、私が閨を怖がり、拒んでいたから出来なかったと言って、離縁を申し立ててくださいませ」
「…なっ…っ!」

「心配なさらなくとも、私の方に非があれば持参金はお返しいただく必要もないと存じます」
「違う!そんな心配はしていない!金などいらない!私は貴女と離縁などしたくないのだ!」

再び立ち上がった俺はそう叫んだ。
間にテーブルが無ければ今にも彼女に掴みかかってしまいそうだ。

「セリーヌとは貴女との縁談が持ち上がる前にすでに終わっている。今回何の思惑があって彼女がこんな手紙を送ってきたのか知らないが、私は応じるつもりなど微塵も無い。今回貴女を迎えに来たのは、今までの態度を謝罪し、貴女と夫婦としてやり直したかったからだ!」

真摯に訴えても、コンスタンスは怯えたように見上げるだけ。
おそらく俺の言葉など、一句足りとも彼女には響いていない。

手紙が届いてからの数日間、悩んで悩んだ末に出した『白い結婚』故の『離縁』という結論なのだろうから。
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